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米欧市場でヘッジファンドの現金化加速、信用収縮は新段階に

[東京 21日 ロイター] 前日米株式市場の上昇を好感して21日の東京株式市場は上昇したが、NY市場の動向に詳しい市場参加者によると、米株の上昇は一部のヘッジファンドなどがポジションを閉鎖するためにやむなく買い戻しを余儀なくされている部分も多い。

 原油や貴金属の下落とあいまって、ヘッジファンドなどリスクマネーを取り扱っている参加者のポジション閉鎖とキャッシュ化(現金化)の流れが加速しており、世界的な信用収縮は新たなステージに突入した可能性が高い。

 <米株上昇で楽観的見方が広がる東京市場>

 21日の株式市場では、日経平均が続伸。20日の米国株式市場は、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート) の自己資本規制が緩和について19日に公表されたことを好感し、ダウ平均が大きく反発した流れを受け、金融、不動産などを中心に買いが先行した。「朝方は一部のスイス系証券からの売りが目立っていたものの、小口の買い戻しが続き、底堅さを持続している。期末特有の株高期待が高まりつつある」(準大手証券エクイティ部)という。 

三菱UFJ証券・シニア投資ストラテジストの吉越昭二氏は「米国市場では、金融システム不安の後退で金融株が上昇し、投機的な原油、金などの商品市況が下落する理想的な形になった。恐れられていたスタグフレーションが回避されれば、目先の株価は日米とも堅調な動きになりそうだ」と話している。

 このように東京市場では、米株や米市場への楽観的な見方が多く、株価を支えているが、市場の一部には、楽観は禁物との声も出ている。カブドットコム証券・マーケットアナリストの山田勉氏は「為替もまだ戻りが弱く、株式を積極的に買う材料にも乏しい。足元はテクニカル要因での上昇の域を出ない。投資銀行の決算は一巡したが、4月からは商業銀行の決算が本格化する。サブプライムローン絡みで、特に欧州金融機関の損失額が膨らむ可能性もある」と警戒。さらに足元の動きは「これまでのドル売り・株売り・商品買い・債券買いのポジションだったヘッジファンドのアンワインドが始まった可能性が高い」とみている。

 <米株上昇の裏で起きているポジション閉鎖の動き>

 さらに悲観的な見方もマーケットの一部にはくすぶっている。ある外資系証券の関係者は「米株の戻しは、一部の参加者がショートポジションを閉じるために買い戻しているに過ぎない。ファニーメイなどの自己資本比率規制の緩和は、ある種の後付け材料にされた面がある」と指摘する。その上で「米金融機関に余裕がなくなって、その前段としてヘッジファンドへの融資が絞られ、ポジションを閉じている米系ヘッジファンドが目立っている。きょうの東京株式市場の上げは、つかの間の休息のようにみえる」と話す。

 ある邦銀関係者も「原油や貴金属の大幅な下落は、単なる益出し売りの結果ではなく、ポジションクローズによるキャッシュ化の表れのようだ。信用収縮が新たな段階に入った兆候だ」と指摘する。

 実際に米原油先物は20日に2週間ぶりとなる1バレル=100ドル割れとなり、金現物は今週に入って1オンス=1000ドルを超えて史上最高値を更新したが、一転して21日には910ドル台で推移する下落となっている。

 また、マーケットの病巣の根源である金融システム不安の抜本的な解決に必要だとの声が高まっている公的資金の注入に対し、米当局から積極的な見解はいまだに出ず、マーケットからは「金融機関の損失額が少ないという理由で株価が上昇しているうちは底入れ感が出にくい。確かにベアー・スターンズ(BSC.N: 株価, 企業情報, レポート)の身売りは象徴的ではあったが、すべての大手金融機関がうみを出し切ったという印象を与えなければ、投資家の疑心暗鬼は消えない」(欧州系証券幹部)との見方が出ている。

 <円金利市場でも影を潜める裁定取引>

 円債市場でも、大きなゆがみを伴った不自然な動きが、静かに進行している。国債先物は前引けにかけてまとまった売りが出て、中心限月6月限は前営業日比41銭安の140円83銭のほぼ安値引けとなった。午後も140円80銭台での取引が続いた。

 しかし、現物の長期ゾーンにはあまり売りが出ず、10年最長期国債利回りは1.245%─1.285%での推移。一方、30年国債利回りは大幅に買われ、前営業日引け値比で0.065%低下の2.345%まで低下した。

 先の邦銀関係者は「現物と先物や、その他の年限同士の裁定取引が全くワークしていない。円金利市場でも、ヘッジファンド勢の動きに振り回され、ファンダメンタルズとは全く違った値動きになっている」と指摘する。

 先の外資系証券の関係者は「ヘッジファンドのポジションクローズの先に何があるのか、真剣に考えたくないような暗い展開が、このままでは待っていることになる」と警戒感を強めている。